ライン

A man walking alone on a wide sidewalk, seen from behind. Urban light, quiet distance. Essay
ただ進むだけのことが、こんなにも難しいときがある。

歩いていて、目の前から人が自分と同じラインで歩いてきたらどうしますか?

わたしはすぐによけます。
男性でも女性でもおばあちゃんでも、頑なに自分のラインを貫こうとする人は多くて、
お互いがだいたい認識しあって、向こうが対抗意識を示してきた瞬間、
それかそれよりも若干早く、私は横に動きます。

めちゃくちゃ怖い。人のそういうの。

でも、どうしても譲れないときがあって、それは自分のマンションに入るときですね。

ここからライン崩すと、明らかにとても面倒くさくて、できればこのラインでいきたい。

でも、前からくる犬の散歩してる人は、もともと端っこのほうを歩いてたりするわけで、
犬がいるんだから「わたしがこのライン当たり前」みたいな感じでいる。

とても信頼して、わたしがよけるのを当然みたいな優しい視線を投げかけてくる。

でも、重い荷物などを持っていると、どうしてもこのままいかせてほしい。

そうすると向こうが「なんで? よけないの?」っていう、純粋な疑問のまなざしで見てくるから、
わたしはあからさまに鍵を取り出し、端っこのはじ、もはや歩く場所じゃない金具?の上のようなところを歩きながら、なんとかマンションに入る。

お互いの目的が達成できるように。

少し急いでわたしが先にマンションに入れば、その人はラインを崩さずにまっすぐ行けるから。

くだらないことで対抗意識を持っていると思われるのがとても苦手。

こういうのとても疲れるんですよね……

(2021年4月29日)



写真:Clem OnojeghuoUnsplash より